儚い音が部屋に響く。
エアリスは一人ベッドに腰を下ろし、膝の上にあるものを大事そうに撫でていた。
その手にあるのはオルゴール。ホール型のガラスの中には二人の男女が入っていて、彼等はくるくると円を描く。
押さえきれない笑みを零しながら、エアリスはベッドに横になった。腕にオルゴールをしっかり抱いて。
そうしてまた、オルゴールを見る。ぽろぽろと零れるワルツに合わせて、彼等は今も踊っている。
「かわいいな」
ふふ、と笑って呟いて、エアリスは愛おしげにオルゴールを撫でた。
ワルツに合わせて踊る彼等は、ピンクのスカートを着た金髪の女の子、男の子は青い服を着ている。
クラウドみたい、とエアリスは小さく零した。それなら、この隣にいるのは私がいい。

これをくれたのはクラウドだ。
なんでも、道端で拾ったらしい。一緒にいたレッド]Vが持って帰ろうと提案したという。
「あんたが最初に目に入ったから、これをやる」
クラウドはぶっきらぼうに言って、私にそれを渡すと、いつものように自室へ籠もってしまった。
戸惑う私にレッド]Vが説明してくれる。外は雪が降っていて寒いけれど、エアリスの心はほんのりと温かくなった。
クラウドにお礼を言おうと部屋をノックしたが、返事はなかった。





クラウドからの、初めての贈り物!
エアリスは微笑んで、オルゴールを見回してみる。
確かにガラスの部分にヒビが入っていて、オルゴールの音色も途中途中、途切れてしまう。
だが、エアリスにはそんなことどうでも良かった。ただただ嬉しくて、何度も何度もオルゴールを撫でる。

エアリスはゆっくりと瞳を閉じた。
クラウドとのワルツを想像してみる。決してクラウドは踊ってくれないだろう。
クラウドはきっと嫌がって、私の手をはねのける。私はそれでも構わない。そんなクラウドと踊りたい。
ベッドに横になったまま、エアリスはすっと腕を伸ばした。
片手は腰に、もう片方はクラウドの掌に。

この人形のように、くるくると踊る。
きっとその頃には、全てが終わっていて、みんなは笑顔に違いない。
悲しみも全てない世界になっているはずだと、エアリスは信じていた。



頬に何かが伝わり目を開ける。
体を起こし鏡を見ると、そこには涙を流す自分の顔が映っていた。
ゴミでも入ったのだろうか、そっと手で拭って涙を確認する。
悲しくともなんともないのに、涙はぽろぽろと瞳から溢れ出した。

涙をぐいと拭って、ベッドの上にあるオルゴールを見る。
恋人はワルツに合わせて今も尚くるくると踊り続ける。
このネジを巻き続ければ、この恋人達はいつまでもワルツを踊ることができるのだ。
そんなことをぼんやり思っていると、また涙が流れ出す。
どうしたのだろう、私は何かおかしくなってしまったのかもしれない。
だけど、胸がぎゅっと締め付けられてどうにもならない。淋しい、悲しい。

踊り続けるオルゴールを持ち、それにそっと囁く。
「あなた達が、羨ましい」






2005/12/26 meri.






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